【「なぜあの人が接客すると売れるのか?」】


「なんで君たちじゃ売れなくて、部長だとこんなに売れるんだ!」

社長の激が飛びました。


会議室がシーンと静まり返りました。


その売場を担当する店長が、

恐る恐る小さな声で言いました。


「部長とは年齢の差があります。

年配のお客様は、部長の話しは聞きますが、

若い私たちの話しはあまり聞いてくれないので・・・」


社長が言いました。

「そんなことはないだろう!“売る気”が足りないんじゃないか!?」


また店長が言いました。

「売る気はあります。でもあまり声を掛けると、

お客様も嫌がると思いますし、押し売りしたくないんです・・・」


「何も無理やり売れって言ってるんじゃない!

お客様にちゃんと丁寧に商品説明をしろって言ってるんだよ!」

と社長が言いました。


そして、次に店長が言った一言は、

「やりたくたって、できないんです!

部長は、ずっと売場に立って、商品説明だけをしてますが、

私たちは、レジも打つし、掃除もするし・・・忙しいんです!」


「バカモーン!!」

社長の大きな声が、会議室に響き渡りました。


この店長は、残念ながら、できない理由ばかりを考えて、

「問題の原因と責任は自分以外にある」と主張してしまったんですね。


今、思い出しても、悔やまれる・・・


これは、新人店長時代に私がやったことです。



夏の繁忙期になると、

事務系部門の部長が、店舗の応援業務にやってきました。


部長には、ある商品コーナーの横に立ってもらい、

商品説明をしながら販売をしてもらっていました。


その商品は、高価格商品であったため、

しっかり説明をしないとなかなか売れないものでした。


そもそも観光地で、

「こんな高い商品が売れるのか!?」

「声を掛けたって、値段を聞けばみんな逃げるよ!」

現場のスタッフがみんなそう思っている中、


普段は、事務系の部署の部長をしているその年配の男性は、

一日中、ほとんど休まずに、ひたすらお客様に声を掛け、

夕方になると、毎日のように大きな売上を立てていました。


その結果が社長に報告され、

会議の席で、店長である私に激が飛んだわけです。



この出来ごとからは、2つの学びがありました。


ひとつは、

『「売れない理由さがし」も「できない理由さがし」も未来を創らない』

ということです。


「どうしたら売れるのか!?」

「どうしたらできるのか!?」

そこに意識を向けることが、

問題解決のための唯一の方法であり、自分の成長にもつながります。


そしてもうひとつ、

特に気を付けたいことは、

「このお客様は、買わない!」とか

「このお客様は、話しかけると嫌がる!」など


接客をする前に、

自分の中で“勝手にお客様を判別”してしまって、


その想像によって、消極的な行動になってしまうことは、

避けなければならないということです。


「どうせお客様は、買わないだろう・・・」

「こんな値段じゃ、きっと買わない・・・」


心のどこかで、そう思っていたら、

本当にそうなってしまうんですね。


『自分の心の中で、お客様を選んではいけない』

それを学んだ出来ごとでした。


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□■ 観光施設 今日の仕事のヒント 
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『“お客様を選ばない接客”が、売上アップのひとつの方法』


“仕事のヒント”にピンと来たら、まず行動!それが未来を創ります。

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★編集後記★
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数日前に驚くようなシーンを目撃しました。

当社の事務所に時々「お菓子の訪問販売」が来ます。


大福もちや饅頭などを小さなパックに詰めて販売する業者さんが、

企業の事務所を訪問して、

「今日は、おいしい大福ですよ!いかがですか~!」

と売るわけですが・・・


その日、たまたまオフィスビルの外に出たら、

訪問販売の女性スタッフが、

道路を正面から歩いてきた女性(主婦風)にいきなり声を掛けました。


「すごい勇気!」と思いましたが・・・


「今、○○○のおいしいお菓子をご紹介して歩いてるんですが・・・」

とニコニコと路上で商品説明を始めました。


いきなり、お菓子を見せられたその女性は、

「えっ?なに・・・」と最初はとまどっていましたが、


しばらく様子を見ていたら、

なんと見事にお菓子を1パック買ったのです。


しかも嬉しそうに笑って!


お会計は路上で立ったままです・・・


これこそ『お客様を選ばない販売員』のスゴ技!

そう思った出来ごとでした。


2014.12.10発行号
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宮内直哉の『1分で読める 観光施設 仕事のヒント』  |Vol.553
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