【「それはあなたの仕事でしょ!?」と誰も言わないチームは強い】


「○○さん(Aさん)にも手伝ってもらいたいんですが、

いつも忙しい忙しいって言って、協力してくれないんです!」


ある施設を巡回で訪れた時、

販売スタッフのひとりが私に言いました。


その「Aさん」というのは、

その施設にある「売店部署」とは違う「温泉・水道の管理部署」に

所属するスタッフのことでした。


会社としては、

部署の垣根を越えて、他部署の仕事であっても、

可能な限りは協力体制で仕事をするようにという方針を掲げていました。


実際、「売店部署」の仕事を、

「飲食部署」のスタッフが応援するようなことは日常的でしたが、

それでも人員的に不足が出ると、


「温泉・水道の管理部署」という接客部門とは異なる業務をするスタッフにも、

応援の要請が出ていました。



事務所に入るとAさんが、デスクで仕事をしています。

そこで私は言いました。


「Aさん、売店の仕事を少し手伝ってあげてくれないかな?」


Aさんが言いました。

「さっきもそう言われましたけど、

この時期は、点検回りも大変なんですよ。とても時間がとれません。」


そうか・・・


「でも点検は、そんなに時間かからないんじゃないの?

終わってからでいいから応援してあげてよ!」


そう私が言うと、Aさんが言いました。

「本当に大変なんですよ!部長、一緒に行ってみますか!?」


そう言われたら・・・


確かに“その点検という仕事”が何をやっているのか

私自身もよくわかっていませんでした。


知っていたことは、

温泉や水道のタンクを車で巡回して、

湯量や水量などをチェックして歩くということぐらいでした。



「OK!じゃ、一緒に行くよ!」

そう言ってAさんと一緒に車に乗り込んだのです。


その車は、オフロード車です。

舗装していない山の中の道を走り回るための社有車でした。


Aさんが言いました。

「大丈夫ですか?しっかり掴まっててくださいよ!」


そこからです。

すごいことになりました。


「えっ!ここを登るの?危なくない!」


そう私が言った時には、

雪の積もった斜面をいっきに車で駆け上がります。


「やばいよ!落ちるぞ!」

そんな私の叫び声を無視して、

車は、雪の山の中を登っていくのです。


そして・・・


「さぁ、ここで降りてください!あとは歩きですから」

雪原に車を停めて、Aさんが言いました。


「え~歩くってどうやって!?」

そう言って私が呆然としていると、


車から降りたAさんは、トラックの荷台から、

雪かきスコップを取り出して、

雪原の中に道を作りながら、歩きはじめました。


その場所からタンクまで、

どれぐらいの雪をかいたか・・・


初めてその仕事を体験した私は、

あまりの寒さと、雪かきの大変さに、

心も折れるぐらいになってしまったのです。


そんな風に何ヶ所ものタンクを巡回し、

事務所にもどってきた時、Aさんは、言いました。


「部長、けっこう大変だったでしょう?

今日は、吹雪いてないからまだマシな方なんですよ。

また一緒に行きますか?」

そう言って、笑ったのです。



今日お伝えしたかったことは、

「売店部署」と「温泉・水道の管理部署」の協力体制ができていない!

という問題ではありません。


その協力体制を確立する前に、

『他部署の業務を体験し理解する機会が必要である』

ということです。


少数のメンバーで、複数のセクションを運営する観光施設では、

よくあることですが、


「○○部署は、手伝ってくれない!」

「○○部署ばかりが忙しい!」

「○○部署は、別の仕事!」

というような感覚が生れてしまって、

結果として、効率的な業務進行(人員配置)に弊害が及ぶことがあります。


そのような不満や不信感は、

本来のチームワークを乱しかねないものとなる場合もあります。


そこで大切なことは、

『もっとお互いの仕事を理解しよう!』

『もっとお互いの仕事を体験しよう!』

ということです。


どこの施設のどんな部署も、

多くの仕事をもって、がんばっているということが大前提です。


その状況の中で、

少数精鋭のチームワークの力での施設運営を目指すなら、

『部署、セクション感の体験的な業務交流』を行うことをおすすめします。


今日あげた事例は、

販売部署と、管理部署ということで、

まれなケースとは思いますが、


ひとつの会社であり、ひとつの施設であり、

特に同じ屋根の下でがんばる皆さんの“仕事の交流”は、

“強いチーム創り”の上でとても大切なことなのです。


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□■ 観光施設 今日の仕事のヒント 
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『部署、セクション間の“体験的な業務交流”が強いチームを創る』


“仕事のヒント”にピンと来たら、まず行動!それが未来を創ります。

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★編集後記★
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「自分でやってみて、はじめてわかること」って多いですね。

もちろん、全ての業務を実際に体験することは難しいですが、


中長期的な視点で“観光施設のチーム創り”を考えるなら、

今日お伝えしたことは、機会をみつけて仕組み化すると良いでしょう。


業務交流というのは、

緊急の人員配置のために無理に行うものではなく、


“チーム創り”という目的をもって、

事前に計画して、着実に進めていけたら一番効果的だと思います。


2014.12.29発行号
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宮内直哉の『1分で読める 観光施設 仕事のヒント』  |Vol.568
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